Masuk17.
第十七話 シオリvsコテツ
シオリ効果は絶大で富士2は繁盛店となった。特に、女王はいつ来るという予告が一切ないのが逆に功を奏した。まあ、予告もなにもその辺はシオリの自由なので告知しようがないし、それをマサルは狙っていたのであるが。
いつ来るかわからないとなると極論毎日様子を見に来るしかない。何時に来るかも分からないのだ、ずっといるしか会う手段がない。
若くしてマネージャーにまでなっただけあり経営手腕がすばらしい。
経費をかけることなく店の目玉を作ったようなものだ。天才的な発想と言わざるを得ない。
しかし、その功労者にコテツの存在があるのをマサルは忘れてはいなかった。
コテツの強者を見抜き、麻雀を分析する熱心さは変態じみていた。
その分析あってこそシオリはコテツに興味を抱き、気に入ってもらえた(ような感じ)なのであるから感謝せねばならない。
「全部コテツ
92.第二十九話 アヤノ料理長「ところでお前なんでオレに大丈夫とか聞いてきたわけ?」「自分でわかんねえのかよ。さっきの麻雀酷かったぞ」「もう記憶にねえや。棄権したかったけど棄権の方法もよくわかんなかったし。ただなんとなく打ってやり過ごしたから」「東1局の三元牌処理に続いて東2局のリーチのみ。それだけ見ればもうオマエに何かあったと確信できる内容だったよ」「凄い信頼関係ですね。それだけでわかるなんて」とアヤノは心底驚いた。 「ああ、メタは麻雀オタクだから」「お前だってそうだろ」「メタ?」「あ、メタは髙橋のアダ名だからアヤノさんもそう呼んでやってよ」「そうなんですか『メタさん』ふふ、なんかかわいいかも。私、お粥作りますね。キッチン借ります」「ありがとうね。アヤノさん」「おい、アイス食うか? ポカリもあるから飲めよ」と、メタが買い物袋から何個かのアイスとポカリを取り出す。「ありがとう、それ。レモンのやつもらうよ。買い物いくらした? 金払うから」「そんなんいいよ。病人はいらんことを気にせずにゆっくり休めよ」「でも」「いいから!」「たく、お人好しが……」「なんかいいですねえ。うちの店のスタッフの関係性とは大違いです」 アヤノは心底羨ましそうだった。コト アヤノがお粥を置く。腕の筋力があるのか、けっこう重い食器をとても静かに、丁寧にテーブルに置いた。「ふーふーして食べて下さいね♡」
91.第二十八話 天性の女たらし メタとアヤノはコテツの家がある駅に着いた。駅前薬局で少し買い物をして、熱冷ましのシートなども購入する。 ケータイで配信を確認すると、コテツの出番は終わっていた。 結局コテツのアガリは1回しかなく、敗退した。それも仕方ない。本調子ではないのだから。というよりは絶不調だ。「まあ、しゃあねえな。いくらアイツがバケモンでも体調不良にゃ勝てねえか」と言いつつもメタは残念そうだった。(それでもコテツなら勝つかも)そんな期待をしていたのだ。「アヤノさんはまだコテツと喋ったことないよな。気を付けてくれよ。あいつは天性の女たらしだから。口を開けば甘い台詞言い出すんだ。熱出てるからって油断できねえ」「そんな人なの? コテツさんて。でも既婚者よねえ?」 「義理堅いし、真面目だし。仕事に真剣で、プロ意識の高い男だよ。ただ、女たらしなんだ。呼吸するように『可愛いよ』とか『きれいだね』とか言いやがる。でも、結婚してからは女の子とは食事に行くくらいしかしてないみたいだけどな。つまり女が好きなんだよあいつは。少し面倒なくらいにさ」 気付いたらもうコテツの家の前だった。ピンポーン呼び鈴を押すとコテツが出る。『おいこら、デケェ声で人聞きの悪い話をしながら歩くんじゃねえよ。網戸なんだから近所中全部聞こえてんだよ。……鍵はあけてあるから入ってこい』「たく、それが看病されるやつの態度かよ! 少しは感謝したらどうなんだ?」「今さっきまでは感謝してたんだよ」「お邪魔しまーす」
90.第二十七話 おれとお前の仲 メタはコテツのことを心配して電話をかけたが対局中だから出れないという。それはそうか。 またメールでやり取りする。"今どこにいるんだ、カミさんの入院してる病院か?""いや、家。おれのパソコンでかいし重いから持ち運ぶ習慣なくて""家に一人で体調不良じゃ大変だろ。いまちょうど暇だから差し入れ持ってってやるよ""え、悪いよ。大丈夫だよ大人だし。麻雀終わったらコンビニくらい行けるから""気をつかうなよ、おれとお前の仲だろうが""……そうだな、すまん。助けてくれ" メタはマサルに話してみた。すると。「悪いな、そしたら行ってやってくれ。くれぐれもマスクはして。伝染されないようにな」と、事情を聞いたマサルはメタを早上がりさせた。「お先に失礼します。みなさんごゆっくりどうぞ!」 退勤の口上を上げてメタが早上がりする。 すると、階段を降りたその先に背の高い女性がいた。アヤノだ。雀荘に入ろうかどうか悩んでる様子だった。 アヤノがメタに気付く。「あれ? 髙橋さん。どうしたの?」「アヤノさんこそどうして?」「私は今日は16時上がりの半休だったから明日休みだし、1人で来てみたんだけど。でも、1人で入るのはやっぱり勇気が出なくてウロウロしていたの」「そうなんだ、せっかく来たなら遊んでってよ。おれは今から行くとこあるから今日はもう退勤なんだけどさ」「髙橋さんいないなら意味ないし」
89.第二十六話 こいつは誰なんだ 大会の予選期間が終了した。コテツは当然というか、さすがというか、難なく一発でオールトップを出して予選通過。その事も誰にも言わずにいた。仲間たちを大会に誘わなかったことを気にしていたのだ。 でも、そう隠し通すのも限界が来ていた。というのもコテツは本戦のAグループにされておりネットで生配信卓に指定されたからだ。 南上虎徹の名はもう登録してるのでそのままネットで出てしまう。麻雀オタクなメタやネット麻雀に精通しているアキラには絶対に見つかるだろう。(登録名、SNSハンドルネームの『雷神』を使えばよかったかな)と思ったが今さら遅かった。 ◆◇◆◇ 本戦がネット配信される頃。シオリは入院していた。もうそろそろ産まれる頃だからだ。 コテツのパソコンは一応はノートパソコンなのだが、デカくて重いので持ち歩く習慣が無く、常に定位置に固定していたので本戦を終えたら明日は病院へ行くとシオリには伝えていた。今日はコテツは仕事を休んで本戦。明日は出産の立ち会いという予定だった。 しかし、コテツの身体に異変が起こる。なんだか具合が良くない。午後7時半(気分が悪いな)と思いながらも大会の本戦Aグループの試合が生配信で始まった。◆◇◆◇ メタはしばらく早番だった。 コテツが4連休を取っているのでその期間の早番の打ち子1番手を担当してもらうためだ。 コテツの4連休なんて聞いたことがなかったが出産予定日が近かったからそのためだとみんな理解した。しかし、本当の所は初日は別の理由だった。夕方からの麻雀大会本戦に出るためである。────
88.第二十伍話 子供は臨時パーティー 白山シオリが引退した。 元々積極性のないシオリは結婚してからは活動休止状態だったが、今回妊娠して、これからは妻として、そして母としての幸せを大切にしていきたいということでプロ団体から籍を消した。 収入面は夫である南上コテツに全て任せることにして自分は子供と一緒にいれる時間を何より優先した。 シオリは賢い人だ。だからまだ産む前からあることに気づいていた。それは、子供とはいずれ別れる。子供は臨時パーティーだということ。 いかに我が子だと言っても同じ時を過ごせるのはほんの20数年。生涯を共に生きてくれる相手は配偶者だけなのだと、それを理解していた。だから、大切にする。子供が子供である時間を。出来る限り手厚く接して育てていこうと決めていた。 私の冒険はここで一度終わり。一旦セーブして。ここからは母としてサポートの物語。子供が主役の物語の脇役になる。というような、そんな考えを持てるのがシオリなのであった。 ◆◇◆◇ 丁度その時期に参加費無料のネット麻雀から予選参加出来る新しいタイプの麻雀大会が告知された。賞金は優勝400万円。連続した5半荘の成績上位が予選通過となり本戦へと進出する。本戦からはネットでその日その日で配信卓があり1箇所だけは生配信される。準決勝卓からはリアルの卓を使用しての配信となる。参加資格は18歳以上。つまり特にないということだ。(これは出るしかないな)とコテツは思った。 いつもなら面白そうな事はみんなにも声をかけるコテツだが、富士2の連中は本当に世界レベルで強いやつが揃っているのでやめておいた。 今回だけは強敵と当たりたくない。400万円はおれが貰って子供のために貯金しとくんだ。そう考えて(あいつらも誘いたいなぁ)というウズウズする気持ちをなんとか制御して誰に
87.第二十四話 女の人生計画「楽しかったです、また来ますね髙橋さん」「おれもまた来るよ」と言ってアヤノとリュウイチは帰って行った。「ありがとうございました! またよろしくお願いします!」 朝5時少し前。始発はそろそろ出ている。「アヤノさ。なかなか男を見る目があるじゃないか」とリュウイチは言う。「そうでしょう? 髙橋さんは格好良かったでしょう? この前なんかね……」 アヤノは先日の数え役満の話をしたりして弟と盛り上がった。リュウイチも麻雀をある程度理解しているからこそメタの凄さがよくわかった。 電車が到着して、2人は乗車した。「ただ、太り過ぎじゃねえか?」「それは私が健康管理するから大丈夫よ。長生きしてもらいたいからね」「長生きって、もう結婚を視野に入れてんのかよ」「当たり前でしょ。大人なんだから。子供の恋愛とは違うのよ。この年齢で好きになったら結婚はセットよ」「そういうもんか」「そうよ。何? あんた誰かと軽い気持ちで付き合ってたりする訳? え、バカなの?」「ウッ!」 図星を突かれてリュウイチはビクッとする。「相手は歳上? ならそんな意識はダメよ、出産とかも女は計画して生きてるんだから。真面目に考えてあげなさい」 いつの間にか双子の姉はずいぶん大人になっていたようだ。「なんか、本当に姉ちゃんって感じだな」「実際、本当に姉ちゃんじゃない」「双子だろ」「双子でも、姉ちゃんは姉ちゃんよ。私はそういう意識で育ったんだから」「そうだ、写真あるんでしょ。どんな女か見せなさいよ」
3.第三話 責任者 マサル マサルは家庭環境に恵まれていなかった。 幼少期に両親が離婚していて母と姉との3人家族で質素な暮らしをしていた。 趣味と言えば将棋で。いつも近所に住む同年代の仲良し3人組で将棋を指していた。 マサルには将棋の実力があったが、3人の中では1番強いのはシンイチ君で、マサルは2番手か3番手の実力だった。 マサルの学力は高くて、中学に入学してからも難なく学力テストは
6.第六話 計算女王 シオリ シオリは計算機のような女だった。一流大学大学院まで行って化石の研究チームにまで入って勉強していたが時給の高いアルバイト先の雀荘で「本走入れればもっと時給上がるよ」と言われて麻雀を覚え「プロになればさらに時給上がるし今なら社員旅行で沖縄も行けるよ」と言われたのでプロ試験を受けた。結果はなんと首席合格。大学院は2年で辞めてプロ麻雀プレイヤーとしての道を進む。 シオリは瞬く間に頭角を表した。時給UP&沖縄旅行目当てでしかないのでプロリ
5.第伍話 4人目の男 アキラ お父さんは普通のサラリーマンで夜6時に帰ってくる。お母さんはスーパーのレジのパートタイマーとして働いていてごく普通の家庭に育った。 特別なことはなく、どこにでも当たり前にある平凡な暮らしをしていたと思う。 妹が1人いて兄としてしっかりしないとという気持ちはあったから普通に進学して普通に就職を何となくだけど目標にしてた。 特別とは程遠い普通の人。それが自分。 そう自己紹介するのは4
4.第四話 コードネーム ジンギ いわゆる義賊の真似事だった。 悪人から大金を巧妙に騙し取って。表に出せない金だから泣き寝入り。そんな、悪人を騙しまくる天才イケメン詐欺師ギンジ。 巷ではその悪人だけ狙った義賊的な活躍からコードネーム『ジンギ』と呼ばれていた。 ジンギが悪党から奪った金は2億円にもなった。 それだけあればもうリスクを背負って詐欺を働く必要もないと思い、そこで詐欺師稼業か